勤務先の「違法行為」を知ったらどうすべき?通報者も企業も守る「公益通報者保護法」を解説

青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。1月28日(日)の放送では、消費者庁 公益通報・協働担当 参事官付き企画官の安達ゆり(あだち・ゆり)さんを迎えて、「企業も通報者も守ります! 公益通報者保護法」をテーマに話を伺いました。


(左から)青木源太、安達ゆりさん、足立梨花



◆「公益通報者保護法」とは?

従業員が勤めている企業の違法行為を通報することを「公益通報」と言います。例えば、「自動車修理工場で、自動車をワザと傷つけて保険金を不正請求する行為」「会社が不正なデータを使って国の認証を取得する行為」「無許可で産業廃棄物の処分をする行為」などがあります。

このような違法行為を公益通報によって明るみにすることは、企業がその違法行為を改めるきっかけになり、それによって私たちの安全が守られ、社会に利益をもたらすことになります。

そのなかで、2006年に施行されたのが「公益通報者保護法」です。これは、従業員が勤め先の不正行為を通報したことを理由に、勤め先から解雇や降格、不自然な異動など、不利益な取り扱いを受けないように(従業員を)守るための条件などを定めた法律です。この法律で保護される通報者とは、その企業などで働く正社員、派遣社員、アルバイト、パートタイマー、業務委託先の従業員や派遣社員など、どんな雇用形態であっても保護されます。

この法律は2020年に一部改正され、2022年から新しいルールが施行されており、「新しいルールでは、企業の経営に携わっている役員や、退職して1年以内の従業員も保護の対象となりました」と安達さん。これにより、退職金が支給されないなどの不利益処分からも守られるようになりました。

しかし、不正行為であれば、どんな通報でも守られるというわけではありません。公益通報者保護法で保護されるには、「刑法や食品衛生法、建築基準法、労働基準法など『国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律(約500本)』のうち刑事罰の対象となる行為です。これに加えて、改正後は行政罰につながる違反行為も対象になりました」と説明。

公益通報の対象となる通報先は「勤め先の内部通報窓口や上司など」「行政機関」「報道機関など」の3つです。ただし、外部に通報する場合は、通報先によって書面や証拠などが必要になるため注意が必要です。通報を検討しているが“条件を満たしているかどうか分からない”“通報先が分からない”など、疑問点がある場合は、消費者庁が「公益通報者保護制度相談ダイヤル(一元的相談窓口/受付時間:平日 9:30~12:30、13:30~17:30 ※土日祝日及び年末年始を除く)」を設けていますので、お問い合わせください。

◆2022年6月から内部通報制度の整備が“義務化”に

公益通報者保護法の一部が改正された際“事業者に対する義務”も加えられました。改正された法律について、安達さんは「従業員が301人以上の企業や法人に対して、従業員などからの不正に関する通報に適切に対応するための体制、いわゆる“内部通報制度”を整備することが義務づけられました。具体的には、従業員のために内部不正通報窓口を設置すること、通報に対して調査すること、また、通報で発覚した違法行為を止めることです」と安達さん。

企業の内部通報制度の整備は、2022年の6月から義務になっています。また、従業員数300人以下の中小事業者の場合は努力義務となっています。ところが、帝国データバンクが2023年10月におこなった調査によると、従業員が301人以上の企業で、「体制整備義務に対応している」と答えたのは約6割。なんと4割の企業は、義務にも関わらず、まだ対応していない状況です。

改正された法律では、体制整備義務に違反している企業や法人には、消費者庁が行政措置をおこなうことを定めているため、「助言や指導、勧告をおこない、それに従わない場合は、その旨を公表します」と注意を促します。それでも対応していない企業が約4割も存在する理由について、「いろいろあると思いますが、1つは、まだ体制を整備する必要性がよく理解されていないのかもしれません」と安達さん。

さらには、「公益通報者保護法が求める内部通報制度とは、企業自らが内部の不正を早期に発見・是正して取引先や消費者からの信頼を守り、その結果、企業と従業員を守る制度です。従業員が不正行為を通報しやすいように専用の窓口を設け、不正行為に関する通報に対して調査・是正する体制の整備が必要です」とも。

消費者庁では、まだ対応していない企業は急いで体制を整える必要があるものの、何から始めていいのか分からないといった企業を支援するために「内部通報制度導入支援キット」と名付けて、内部通報制度の導入に役立つ資料や動画を一式作成し、昨年12月に消費者庁ウェブサイトにて公開しています。

導入支援キットには、企業が策定しなければならない「内部通報への対応に関する内部規程」や内部通報受付時に使用する「通報受付票」のサンプルが用意されているほか、経営者向け動画では、内部通報制度の導入意義や手順を5分程度で解説しており、従業員の研修に利用できる動画もあります。

また、改定されたルールのなかでも、特に重要なルールについて言及。それは、従業員からの内部通報に対応する担当者の守秘義務で、「事業者は、内部通報窓口を設置すると同時に、通報の受付や調査をおこなう担当者を『従事者』として指定する必要があります。この従事者は、当然、通報者が誰かを知り得る立場にあります。通報者が誰であるのか、決して、その秘密を漏らしてはいけません」と強調します。

なお、違反した場合は、その従事者個人に対して30万円以下の罰金が科されます。これは、企業の義務違反ではなく、あくまでも従事者個人の義務違反なので、罰も従事者個人が負うことになります。直接名前を漏らさなくても、通報者を特定させるような情報を漏らした場合も義務違反となるため、注意が必要です。

最後に安達さんは、「消費者庁では、お勤めの方が職場で『何かおかしい』『職業倫理に照らして間違っている』と思うことがあったら、組織や経営者に対しても声を上げることを推奨する企業文化の醸成を促しています。経営者の皆さまには、企業と従業員を守るためにも内部通報制度を導入し、従業員の方々に『ぜひ、声を上げてほしい』と積極的に呼びかけていただきたいです」と話していました。

今回のテーマについて、足立が印象に残ったこととして、帝国データバンクが実施した調査結果を挙げます。約4割の企業が義務であるにも関わらず、まだ体制整備の対応ができていない現状に驚くとともに、「どうやったらいいのか分からないという企業もいるかもしれないので『内部通報制度導入支援キット』というものがあることを皆さんにお伝えしたい」とコメント。

一方、青木が着目したのは、公益通報者保護法は“通報者を守る法律”であると同時に“企業も守る法律”であるという点。「企業側も、こうした意識改革があることで、その体制の整備も進んでいくのではないかと思います」と話していました。


(左から)青木源太、足立梨花



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1月28日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年2月5日(月) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花

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