2030年には「輸送力」が“34%”低下!?「物流2024年問題」解決のために私たちができることは?

青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。2月25日(日)の放送では、流通経済大学 流通情報学部 教授で物流科学研究所長の矢野裕児(やの・ゆうじ)さんを迎えて、「みんなで解決しよう! 物流2024年問題」をテーマに話を伺いました。


(左から)青木源太、矢野裕児さん、足立梨花



◆「物流2024年問題」とは?

物流2024年問題について、矢野さんは「これまで日本の物流は、トラックドライバーの長時間労働により支えられてきた側面がありました。働き方改革を推進するための法律が2019年から施行されていましたが、ドライバーの働き方が特殊であることから、これまで猶予されていたんです。しかし、2024年4月から、トラックドライバーにもこの法律が適用されることになります。その結果、ドライバーの年間の時間外労働の上限が“960時間”に設定されることになります」と説明。

これまで、ドライバーの時間外労働の上限が法律で定められていなかったため、長時間労働するドライバーは多く、トラックドライバーの年間労働時間を全産業と比較すると、約2割も長いという問題がありました。これが、4月からの適用によってドライバーの労働環境が改善されるメリットがあります。

その一方で、「“輸送力が低下して物流が滞る事態が起きる”ということが心配されています。これが、いわゆる『物流2024年問題』です」と矢野さん。ちなみに、このまま何も対策をしなければ、2024年は14%、2030年には34%も輸送力が低下すると推計されています。

この問題は、単に“ドライバーを増やせばいい”ということではありません。というのも、トラックドライバーは重労働でありながら賃金がそれほど高くないため、若い人がなかなか参入してこないのが現状で、実際に年間所得額を全産業と比較すると1割ほど低いそうです。

◆「物流の革新に向けた政策パッケージ」を解説

そこで政府では、物流産業を魅力ある職場とするため、トラックドライバーへの働き方改革関連法を適用する前に「物流の革新に向けた政策パッケージ」を策定しました。

この政策について、矢野さんは「『2024年問題』と『担い手不足』の課題に加えて、『温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルへの対応』など、物流が抱えるさまざまな課題の解決を目的に策定されたものです。物流を支えるための環境整備に向けて“物流事業者に物流業務を依頼する依頼者(荷主)”と“物流事業者”、そして“一般消費者”の三者が協力しておこなってほしい取り組みなどが示されています」と解説。

では、三者に向けてどのような行動が求められているのかというと、「まず、荷主企業、物流事業者の双方に対して非効率な商慣行、つまり“古くからある習わし”を見直すように示されています」と言及。

その“古くからある習わし”として代表的なものが「荷待ち時間」「荷役作業」の2つです。「荷待ち時間」は、ドライバーが荷主からの荷物を受け取るために荷主先に時間通り到着しても、荷主先の都合で数時間も待たされるケースが日常的に起きており「無駄が非常に多い」と矢野さん。

また、運んだ荷物を受け渡す際、相手の倉庫の指定場所に収めるための荷下ろし作業など、いわゆる「荷役作業」をドライバーが無償でおこなっていることも多く、それも負担となっています。

そのため、物流革新に向けた政策パッケージでは「荷待ち・荷役時間を2時間以内に収めること」「荷主は物流事業者に対して、運送契約にない荷役作業をさせないこと」を求めています。

そんななか、物流事業者やドライバーが不当な扱いを受けないように、しっかりと目を光らせてくれる存在が「トラックGメン」です。

トラックGメンは、トラック運送における不適正な取引の監視を強化するために昨年7月に創設。国土交通省の職員で構成されており、荷主や物流事業者の監視や、貨物自動車運送事業法に基づいて、違反行為の疑いがある荷主や物流事業者に対して働きかけをおこない、改善されない場合は、勧告や公表を実施しています。

◆“再配達”は時間・労力を無駄に使わせる

また、物流の革新に向けた政策パッケージでは、物流の効率化も示されています。自動運転やドローン物流、自動配送ロボットなどデジタルを活用することはもちろんのこと、特に矢野さんが推奨していたのが「モーダルシフトの推進」です。

モーダルシフトとは、これまで多くを頼っていたトラックによる貨物輸送を鉄道や船舶を利用した輸送へシフトすること。これにより、環境負荷低減や人手不足の一助が期待される一方で、小回りが利くトラック輸送よりも時間がかかることが想定されますが、矢野さんは「“輸送力”が限界を迎えつつあるため、社会全体で『荷物がすぐに届くのは当たり前』という意識を見直していく、意識改革も重要だと思います」と力を込めます。

さらに、私たち消費者に特に求められることとして「荷物を1回で受け取ること」を呼びかけます。私たちが荷物を1回で受け取らないと“再配達”という手間が発生し、これこそが時間や労力を無駄に使わせてしまうことになります。実際、宅配貨物の再配達率は約11.1%になります。

こうした現状に、矢野さんは「ぜひ消費者の方々は、日時指定などをうまく活用して、1回で確実に荷物を受け取ることを心がけてほしいです。今は、配達状況の通知アプリなどもありますし、受け取り方についても宅配ボックスやコンビニ受け取りなどもありますから、それらをうまく使ってほしい」と声を大にします。

最後に、物流業界の持続的成長に向けて、「現在『物流2024年問題』が大きな話題となっていますが、実は、これからドライバーが減っていくことが予想されます。経済、産業、そして、私たちの生活を支えている物流の重要性を皆さんに認識していただくのと同時に、私たちのちょっとした行動変容が物流効率を良くしていくこと、さらには“適正な対価を払う”といったことを通じて、物流がより良い姿に変革していくことを期待しています」と話していました。

今回のテーマを通じて、足立は“荷物を1回で受け取ること”の大切さを痛感した様子で、「こんなこと(物流2024年問題)が起きていたなんて、知らなかったことが恥ずかしいぐらい、皆さんにも知っていただきたい問題だと思いました。再配達が発生するだけでドライバーさんの労力・負担がかなりかかってしまうので、確実に1回で受け取ることを心がけるなど、私たちにできることをやっていきたい」とコメント。

一方、青木は、物流の革新に向けた政策パッケージのなかでも“荷主企業、物流事業者の双方に対して、非効率な商慣行の見直し”が示されている点に着目し、「この辺りも、かなり無駄だと感じるような時間が発生していますし、それが(ドライバーの)労働時間を圧迫しているので、見直されてほしいなと思います」と望んでいました。


(左から)青木源太、足立梨花



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2月25日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年3月4日(月) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花

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