今年のスポーツ界の顔、スポーツ界を超えて世界を魅了した、アメリカメジャーリーグの大谷翔平選手の特集コンテンツ「SHO TIME AuDee」。
大谷選手ご本人はもちろん、大谷選手が所属するエンゼルスのチームのみなさんの貴重なインタビューや、私、赤木ひろこが取材して感じたことなどを交えながら、大谷選手の魅力を10回にわたってお届けしていく。
二回目のテーマは「リアル二刀流で駆け抜けた2021年、大谷翔平選手の進化の秘密」。
二刀流で完走した2021年を振り返って
「より多く試合に出られたのは単純に楽しかったですし、それだけ試合に貢献できる頻度が高いということは、選手としてもやりがいがあることだと思うので、すごい楽しい1年だったかなと思います」
私たちも楽しかった!大谷選手、ありがとう!って言いたい。
打ってはホームランを連発し、投げては脅威の奪三振ショー、メジャーリーグベースボールの常識を打ち破り、スポーツの歴史で、誰もなし得なかったことをやってのけた唯一無二の存在。
大谷選手に感化された。力をもらった。
真っ直ぐに一生懸命な姿、そして野球を楽しんでいる笑顔、スマートな立ち振る舞い、想像を超えたパフォーマンス。
時代はコロナ禍で、多くの人々が不安な日々を過ごしていて、世の中の価値観がガラリと変わりつつある時に、明日を生きる勇気をくれた。希望の光になった。
「1年間、まず大きな怪我なく出続けられたことは良かったですし、逆に言えば、もっと早い段階で、こういう形を作らなきゃいけなかったので、怪我とかありましたし、そういう意味では、今年1年怪我なくできて良かったと思います」
メジャー1年目を終えた2018年の10月には右肘のトミー・ジョン手術を受けた。2019年のオフには左膝の手術。昨年は、新型コロナウイルスの影響で、行われた試合はわずか60試合。打者としても、投手としても、不本意なシーズンだった。そんな2020年を払拭し、2021年は、見事に復活した。
「今年は特に大きな離脱をしないように、リカバリーの方をメインにしながらやってきたかなと思います」
――2021年はなぜ怪我なく過ごせたのだろうか?
「もちろん慣れの部分もあると思いますし、3年間やってきて、どういうふうに1年間やればいいのか知れたと言うのは大きいと思います」
――とはいえ、例年と違って、登板前後の休養日がなかった。先発時も打者で出場し、まさにリアル二刀流のフル稼働。体への負担はなかったのだろうか?
「そんなになかったです。負担になっている実感はもちろん無いですし、試合に出続ける中で、その他のトレーニングだったり、練習の内容だったりとかで、調整して、という感じなので、1年間を通して、投げた翌日だからとか、前日だからとか、なかったと思います」
広報のグレースさんから見た大谷選手
大谷選手は毎日、一体、どのようなルーティーンをこなしているのだろうか?
大谷選手を近くで支えている、エンゼルス広報のグレース・マクナミーさんにお話を伺った。グレースさんは、ドジャースの野茂英雄さんの広報もつとめ、まさにメジャーリーガーの成功者の傍にこの人あり、という存在。日本人メディアを牽引し、取材環境を作ってくださる広報のパイオニアである。美しくてかっこいい方だ。

2021年オールスター戦での写真(右から2番目:グレース・マクナミーさん)
「凄い人だと思います。彼はすごく頑張り屋で、私の娘たちも、実はバスケを高校卒業までやってきて、彼女たちも結構頑張って練習とかトレーニングをやってきたのですが、彼を見ると、その努力の差が、あまりにも激しくて、“努力”と言うと、辛そうなイメージじゃないですか。それをすごく楽しそうに、練習をしている。楽しそうに努力をしてここにきているという、そういうところがやはり普通の、まあ大リーグですから、プロの選手がたくさんいるわけであって、同じように努力をしてここまできた方たちばかりなのですが、彼は本当に、野球を楽しそうにしている、その練習も、苦にならないというような、厳しい練習でさえ、心からそれを楽しんでいるのではないかな、と、私としてはそんな気持ちがします。あと、他の選手との場を築きながら、すごくフレンドリーだし、他の人たちに対しても、すごく紳士的なところがあるので、一言で言うと、凄い人です」
グレースさんが、“厳しい練習でさえ、楽しんでやっているように感じる”と、言われていたように、そういった練習のシーンを垣間見られる時があった。
大谷選手は、グラウンドの練習で、センターの壁を使って、いつも“壁あて”をルーティーンとされている。毎日、同じ場所でやっているので、足元の芝生の同じ場所が薄れてきていたほど。その時に、ダグアウトまで、時折、大谷選手の笑い声が聞こえることもあった。
8月18日(日本時間19日)試合後の会見での衝撃の言葉
8月18日(日本時間19日)のデトロイト・タイガース戦、1番投手で先発出場して8勝目をあげ、さらには日本人初の大台となる40号ホームランを放った。
試合後に行われた会見で、ここまで無事に、強い体で戻ってこられたことについて、改めてどう考えていらっしゃるでしょうか?という質問に対して、次のように答えた。
「個人的には、まだまだリハビリの中というか、100のうちの上の方にはいるとは思いますけど、まだまだ、身体的にも上へ行けるのではないかと思っているので、その中で、色々と工夫しながら、いい結果が出ていることは、それはそれでいいことかなと思っているので、まだまだ改善するところは多いかなと思っています」
真顔で淡々と、このように語った。本当に驚いた。“リハビリ”という言葉。
今年の快進撃、果敢に立ち向かう活躍の姿に、そのカケラさえ感じさせなかった。しかし現実には、自分の身体と向き合い、苦悩と葛藤、人知れずもがき続け、結果につなげてきた。限りなく長く感じたであろう、その時間が、大谷選手をより強くしていった。
二刀流で、トレーニング、リハビリ、体調管理、睡眠時間の確保、食事、移動や時差の調整、パイオニアには、マニュアルも無い。自ら作っていくしかない。
“もっと早い段階で、こういう形を作らなきゃいけなかった”
“3年間やってきて、どういうふうに1年間やればいいのか知れたと言うのは大きいと思います”
この言葉と、今年の復活に、改めて重みを感じる。
そしてだからこそ、大谷翔平選手は、今も、これからも、美しく輝いている。
次回は11月19日発表のMVPについて。大谷選手の獲得はなるのか。発表直後の様子をお届け予定。
赤木ひろこ(メジャーリーグベースボール・リポーター)
「SHO TIME AuDee」#2
音声版は
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