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“葉を食べる虫”の研究で農業が変わる? 東京農大・竹内将俊教授が解説!

川瀬良子がパーソナリティをつとめ、日本の農業を応援するTOKYO FMのラジオ番組「あぐりずむ」。毎週火曜は、農業はもちろん、時代の先を捉えるさまざまな研究をおこなっている東京農業大学の農学研究を紹介します。6月6日(火)の放送では、東京農業大学 地域創成科学科 地域環境保全学研究室の竹内将俊(たけうち・まさとし)教授に、研究領域のひとつである「“葉”を食べる虫」について伺いました。


(左から)川瀬良子、竹内将俊教授



◆葉を食べる虫、虫に食べられる植物の不思議…

葉を食べる虫でよく目にするものだと、イモムシや毛虫などのチョウ(蝶)やガ(蛾)の幼虫が挙げられますが、竹内教授は「葉を食べる虫って、ものすごくグループの数が多いんです。例えば、小さな甲虫だとハムシと呼ばれるグループ。そのほか、ハチの仲間でもハバチというグループがいます。ハチといえば、ミツバチやアシナガバチ、スズメバチなどが有名ですけど、元々は葉を食べるグループから進化をしてきたと言われています」と解説。

そんななか、竹内教授が最も研究に費やしてきたのは、トホシテントウという10個の黒い斑紋が特徴のテントウムシです。

竹内教授によると、トホシテントウはカラスウリ(烏瓜)やアマチャヅル(甘茶蔓)などウリ科の葉を食べるのですが、「その食べ方が2つの植物で違っていて、カラスウリやキカラスウリ(黄烏瓜)を食べるときには、葉を食べる前に円状、もしくは半円状に切れ目を先につけてから、その円内の葉を食べるんです」と言います。ちなみに、摂食前に葉に切れ目をつけることをトレンチ行動と言います。

植物のなかには、さまざまな摂食阻害物質が含まれており、葉脈をカットすることによって、「自分にとって嫌な物質がそこから外に出ていっている可能性があります」と竹内教授。つまり、トレンチ行動をおこなうことで、安全に葉を食べるスペースを確保することができるということです。

そして、トホシテントウがカラスウリやキカラスウリを食べるときにはトレンチ行動が見られるものの、アマチャヅルを食べるときには、切れ目を入れることなくむしゃむしゃと食べることから「その場で判断しているということ」と結論づけます。

さらに、竹内教授いわく、植物のなかには虫に葉を食べられると、揮発性(空気中に拡散する)物質を出すものがいて、葉を食べていた虫に対してその物質を放出することで、「(葉を食べる虫の)天敵に“あそこに自分のエサがいる”と感知させて、その植物におびき寄せる。つまり、自分がこれ以上(虫に葉を)食べられないように自己防衛をする植物もいるんです」と解説。

最後に川瀬が、“葉”を食べる虫の研究が進むことによって、社会にどのような影響を与えるのかを尋ねると、竹内教授は「そういったもの(揮発性物質)を人工的に放出することができれば、天敵を誘引することができます。いわゆる、化学農薬と呼ばれているものとは別に、生態系にもやさしい代替物として応用できる可能性があるかもしれない、そのような研究がおこなわれています」と話します。

これを受けて、川瀬は「すごい……(そうした研究によって)農業の世界が変わりそう。虫のすごさ、植物のすごさを改めて感じました」と驚いていました。

<番組概要>
番組名:あぐりずむ
放送日時:毎週月曜~木曜 15:50~16:00
パーソナリティ:川瀬良子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/agrizm/