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「プラスチックを分解する菌」を探し求めて…東京農大・徳田宏晴教授が力説する“微生物が持つ可能性”とは?

川瀬良子がパーソナリティをつとめ、日本の農業を応援するTOKYO FMのラジオ番組「あぐりずむ」。毎週火曜は、農業はもちろん、時代の先を捉えるさまざまな研究をおこなっている東京農業大学の農学研究を紹介します。11月7日(火)と11月14日(火)の放送では、微生物工学研究室の徳田宏晴(とくだ・ひろはる)教授に、培養工学について、そして“微生物が持つ可能性”について伺いました。


(左から)徳田宏晴教授、川瀬良子



◆培養工学とは?

まずは、徳田教授が専門としている培養工学について伺うと、「実験室レベルだったものを実用レベルにまでスケールアップをするときに“どのように条件を調整していくか”といったところを扱う学問分野」と説明します。

例えば、ものづくりの初期段階として、実験室では深さ約1.5~2センチ、直径約9センチのシャーレや容量1リットル前後のフラスコを用いて、“どういう条件で菌を培養すると良いか”ということを調べ、それを踏まえて実際のものづくりの検討段階に入るのですが、「例えば、最終的には1,000リットルのタンクで(菌によるものづくりを)やるとなったとして、単純に1,000倍すればうまくいくかというと、そうではないんです」と徳田教授。

ビールの工場見学で使用されているタンクを例に、「タンクが大きくなれば深さがありますよね? そうなると底の部分には圧力がかかってくる。つまり、溶け込む気体の濃度とかも、タンクの上のほうと底の部分では違うんです。なので、(実験段階で)フラスコなどを使用して得たデータを、そのままものづくりに活かせるわけではないので、その差の部分を埋めていくための学問が培養工学です」と解説します。

◆環境面に及ぼす効果は絶大!?“微生物の可能性”

現在、世の中にある微生物の総数について、徳田教授は「はっきりとは分かっていませんが、我々が培養という形で生やすことができる菌は、地球上に存在している菌の概ね1%、多くても数パーセントじゃないか」と言います。

とはいえ、そのなかから、傷口が化膿することを防止するために使われる抗生物質の1種である「ペニシリン」を作り出す“ペニシリウム”というカビ、うま味調味料の主成分であるグルタミン酸ソーダを作る“コリネバクテリウム・グルタミカム”という細菌など、私たち人間の生活を支えてくれている微生物も多く発見されています。

そんな研究を続ける徳田教授に、今後の展望を伺うと、「我々の思い通りに菌の増殖や物質生産を制御できたら面白いと思っている」と声を大にします。

実際に微生物を活用した事例もあり、使い古されて山積みとなったタイヤが雨に打たれたとき、タイヤを作る工程で使われる薬剤・メルカプトベンゾチアゾールが漏れ出てしまい、それが河川などに流出すると水辺の生物に悪影響を及ぼすため、それを防ぐために利用できる微生物を探索し、徳田教授はメルカプトベンゾチアゾールによく吸着する菌を新たに見出したそう。

さらに、かつては石けんなどのパーソナルケア用品に“抗菌剤”が含まれていて、「それを使った後、生活排水として河川に流れてしまうと生物に悪影響が出てしまいますが、それを除去するのに使えそうな菌も見つけました」と話します。

また最近は“マイクロプラスチック”に関心を寄せていると言います。というのも「“プラスチックを分解する菌”というのはなかなかいなくて、ここ3年ぐらい(研究を)続けているんですけど、いい菌が全然いない」と吐露。

徳田教授いわく“ペットボトルを分解する菌を見つけた”という論文もあるそうですが、「プラスチックなどの素材を作るときは“微生物にやられないように”と化学合成で作っているので、今度はそれを覆す形で“(プラスチックを)分解する菌”を発見するのは、非常に難しい」と語ります。

しかし、もし発見できれば、環境面に及ぼす好影響は計り知れないとあって、「これは今後(菌の発見に)期待したいですね!」と切望する川瀬でした。



東京農業大学・醸造科学科による企画展「JOZOO -醸造と発酵のせかい-」(※入場無料)が、「東京農業大学『食と農』の博物館」にて2024年4月6日(土)まで開催していますので、ぜひ足を運んでみてください。

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11月14日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年11月22日(水) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:あぐりずむ
放送日時:毎週月曜~木曜 15:50~16:00
パーソナリティ:川瀬良子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/agrizm/

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