老舗温泉旅館「元湯 陣屋」赤字から黒字転換の裏側。 旅館のDX、そして食事単価の自然な引き上げとは?

みなさま、あけましておめでとうございます。

2023年も『お店ラジオ』をよろしくお願いいたします!

パーソナリティは、事業投資家の三戸政和さんと、スマレジ代表の山本博士さん。

ゲストは、新年一回目にふさわしい、鶴巻温泉「元湯 陣屋」4代目女将の宮崎知子さんでした。

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「元湯 陣屋」は、神奈川県の鶴巻温泉にある、創業1918年の老舗温泉旅館です。

昭和の時代には、囲碁や将棋のタイトル戦の舞台にもなった、歴史ある旅館なんですよ。

宮崎さんが、そんな「元湯 陣屋」の女将になったのは、夫の父が急死したことがきっかけだったそうです。

後を継いでわかったことは、当時の陣屋は「売り上げが芳しくない状態だった」とのこと。

そこからどうやって旅館を立て直していったのでしょうか。

 

「最初は一ヶ月ほど静観して、まず何が問題なのか見ていきました」と宮崎さん。

「敷地面積が一万坪あるので、従業員の方々が現場に散ってしまったあと、誰がどこで何をしているのか管理監督が難しい。もう捜索願いなんです。誰々さん見ませんでしたか?!どこにいますか?!みたいな。内線電話で皆さんとコンタクトをとろうとするんですけど、内線電話も、皆さん忙しいと電話をとれなかったりするんですよね。電話ではない情報共有ツールを何かしら手に入れなくてはいけないってことに気がつきました」。

連絡の行き違いで、お客様に迷惑をかけることが多発していたと言います。

 

そこで考えたのが旅館のDX

宮崎さんは、まず手書きの台帳をデジタル化しようと考えました。

「行き着いたのがクラウドです。でも当時、私たちの要望を満たしたクラウドのサービスが世の中にございませんで、夫が『じゃあ自社で作ろう』と。で、エンジニアを雇用して、自分たちで作り出すってことを始めました」。

 

歴史ある老舗旅館のDX、従業員さんたちから反発はなかったのでしょうか?

すると、こんなお答えが…。

「勤怠管理機能もシステムの中に少しずつ構築していきまして、3年目くらいに出来上がった時、『出勤したときにログインして出勤ボタンを押さないとお給料を支払いません』ってしました。そしたら全員やるようになりました」。

なるほど、まずは手にとってもらうことから始めたんですね。

 

こうした旅館の変革で、確かな変化があったと言います。

「私どもが引き継いだとき、EBITDA(減価償却前の利益)が、マイナス6千万からスタートしてるんですね。それを何とか埋めたくて、情報を共有したり、単価を上げたり、いろんなことをやってたんですけど、赤字から黒字に転換するまでに2年半くらいかかっています」。

DXだけでなく、単価も上げていったんですね!

「単価は5年計画で、一泊二食付き3万円くらい頂ける宿になりたいと(笑)資金的にかなり厳しい状況にあったので、ハードウェアに投資できなかったんですね。当時、お料理であれば何とか工夫で単価を上げることができるんじゃないかと思いました。販売方法としては、客室に変化はないんですけど、お食事を松竹梅みたいな形で3種類選べるようにご用意しておく。当時、懐石料理6800円のコースがあったので、それをそのままキープして、その上に8000円、1万円って用意しておくと、日本人の方って真ん中が好きなので8000円に集約されていくんです。すると、平均単価が1200円上がるんですね。で、8000円コースが馴染んでくると、6800円コースを切って、次は8000円、1万円、12000円の3種類っていう(笑)」。

この繰り返しを十数年間やり続けて、現在は、食事だけで38000円のコースがあると言います。そ、それはすごい!

 

宮崎さんは、露天風呂付きの客室を増やすなどハードウェアに投資できなかった分、こうしたアイデアで危機を乗り越えていきました。

もちろん、料理内容を刷新するための試食会やサービススタッフの教育など、価格に見合う内容にするための努力も惜しみませんでした。

「そうやってお料理で何とかできたものを、今度はハードウェアに投資して…という流れです。一度にはできないので、区画を分けて、10年間ずーっとリニューアルし続けていたんです」。

現在の客層は、都内の富裕層が多いという宮崎さん。

デジタル化など必要な改革は思いきり良く、一方では長期的な視点で単価を上げていく努力を積み重ね、今の「元湯 陣屋」があるんですね。勉強になりました!

 

 

★疑問・質問も募集中

この「お店ラジオ」では、三戸政和さんと山本博士さんへのメッセージもお待ちしております。

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それでは皆様、またのご来店お待ちしております!


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