幻冬舎・石原正康 山田詠美に便箋10枚を送った過去「野生の軍鶏(しゃも)みたいな勢いがあって、自分が担当したいと思わせる作家でした」

TOKYO FMの音声サービス「AuDee(オーディー)」で配信中の、放送作家兼ラジオパーソナリティの植竹公和が、自身のレーダーにかかった文化人を招いてお届けするスペシャルトーク番組「歌う放送作家 植竹公和のアカシック・ラジオ」。

今回のお客様は、幻冬舎のカリスマ編集者で専務取締役の石原正康さん。ここでは、小説家の山田詠美さんとの出会いについて語ってくれました。

▶▶「植竹公和のアカシック・ラジオ」」音声版

(左から)石原正康さん、パーソナリティの植竹公和


◆山田詠美との出会い

植竹:1986年に法政大学を卒業なさって、87年に編集者として関わった山田詠美さんの小説「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」がいきなり直木賞を受賞。これは自分でもちょっと驚いたでしょ?

石原:うまくいってうれしいなと思いました。

植竹:詠美さんとどういう接点があったんですか?

石原:実は全然なくて。山田さんは「ベッドタイムアイズ」という黒人米兵と日本女性の愛を描いた作品が文藝賞を受賞していて、当時ものすごく話題になっていたんです。小説を読んでみたらとにかく面白い。1行1行が人工的じゃないというか、野生の軍鶏(しゃも)みたいな勢いがあって、自分が担当したいと思わせる作家でした。

植竹:手紙を送ったんですって?

石原:「ベッドタイムアイズ」について、便箋で10枚ぐらい書きました。

植竹:それはまだ角川書店(現・KADOKAWA)の社員になる前だったんでしょ? アルバイトのときに見城さんに「やれ」と言われたわけではなくて、自分が勝手に?

石原:そうです。手紙に「ベッドタイムアイズ」の自分なりの気持ちを書いて速達で送って。送ってから2日後ぐらいに電話もして。

植竹:電話番号はどうしてわかったの?

石原:知り合いの新聞記者から聞いたんです。当時は個人情報がけっこうずさんでしたから。

植竹:私立探偵みたいな人ですね(笑)。

石原:出版社に電話しても教えてくれないですから。それで電話したんですが、僕は声がわりと低めなので「月刊カドカワの石原と申します」と言ったら、ベテランの50歳ぐらいかなんかと思ったみたいで「あ、山田と申します」ってしおらしく(笑)。

植竹:あの詠美さんが?

石原:「お手紙ありがとうございました」って。

植竹:しかもまだアルバイトじゃないですか。

石原:そうなんですよ、22歳でした。

(左から)石原正康さん、パーソナリティの植竹公和


◆初対面で意気投合、紅茶だけで5時間

石原:それで「一度会いましょう」と。

植竹:どんな感じだったんですか?

石原:京王プラザの「樹林」というコーヒーハウスがあって、そこで会いました。6時ぐらいに待ち合わせて。山田さんと話が非常に盛り上がったんです。夜の11時ぐらいまでずっと紅茶を飲んで過ごしていました。

植竹:話が弾んだんだ。

石原:どっちも大酒飲みなのに紅茶だけで5時間ぐらい(笑)。それで「じゃあ今度飲みましょうか」みたいな感じで、そのときは別れたんです。だけど山田さんが「石原さん、ちょっと申し訳ないんだけど、千円貸してもらえませんか」って。帰りの電車賃がないと。そのときはまだ伊藤博文の千円札だったんですけど「どうぞどうぞ」と。それはいまでも返してもらっていないんです。

植竹:千円の貸しか、なるほどね。

石原:貸したままという関係をいまも保っています(笑)。当時、山田さんは26、27歳ですごくきれいでかっこよかったです。

植竹:確かにかっこよかったですね。

石原:ホテルのエレベーターから、山田さんが降りてきた瞬間はビックリしましたから。

植竹:まだメールがなかった時代。

石原:もちろんなかったです。山田さんとは会った翌日ぐらいから、1日4時間ぐらい毎日電話をしていたんです。なにを話していたのか全然覚えていないのですが、よくそんな話すことがあったなと。

植竹:それは文学の話?

石原:全然文学の話なんかしていないですね。今日あった話とか「あいつどうだった?」とか、そんな話です。

植竹:音楽の話はしたんですか?

石原:山田さんはソウルミュージックが好きで、僕はロックのほうが好きだったので「ソウルってよくわからないな」と(笑)。

植竹:あらら。

石原:「ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー」というタイトルなんですけど、山田さんに「ソウルって『ウ』だっけ『ー』だっけ?」って聞いたりして(笑)。

植竹:あれって短編集で、曲のタイトルがついていますよね。

石原:有名な曲のタイトルがついていて、インスパイアされる形の小説が8作品入っています。

植竹:あれは本当に新しいなと思いました。


----------------------------------------------------
「植竹公和のアカシック・ラジオ」音声版
----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:歌う放送作家 植竹公和のアカシック・ラジオ
AuDee、Spotifyで配信中
配信日時:隔週金曜10:00〜
パーソナリティ:植竹公和

コンテンツ一覧

スージー鈴木さん登場!「中森明菜」初期作品~スローモーション、少女A、セカンド・ラブ徹底解説 音声

スージー鈴木さん登場!「中森明菜」初期作品~スローモーション、少女A、セカンド・ラブ徹底解説

山田太一追悼特集後編~小説家、エッセイストとしての山田太一について頭木弘樹さんと語り合います。。。 音声

山田太一追悼特集後編~小説家、エッセイストとしての山田太一について頭木弘樹さんと語り合います。。。

追悼 山田太一さん~山田太一さんの残した名作ドラマ「岸辺のアルバム」「男たちの旅路」名シーンを頭木弘樹さんと振り返ります・・・ 音声

追悼 山田太一さん~山田太一さんの残した名作ドラマ「岸辺のアルバム」「男たちの旅路」名シーンを頭木弘樹さんと振り返ります・・・

春日太一さん後編!「鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折」取材秘話・・・ 音声

春日太一さん後編!「鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折」取材秘話・・・

春日太一さんが語る「仲代達矢」「三國連太郎」取材秘話、そして力作「鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折」について・・・ 音声

春日太一さんが語る「仲代達矢」「三國連太郎」取材秘話、そして力作「鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折」について・・・

上田晋也さん後編!トーク番組の司会だけどゲストはその場に行って初めて知るって本当?そして古坂大魔王&堺正章ここだけ秘話も・・・ 音声

上田晋也さん後編!トーク番組の司会だけどゲストはその場に行って初めて知るって本当?そして古坂大魔王&堺正章ここだけ秘話も・・・

上田晋也さん(くりぃむしちゅー)が打ち明ける熊本からの上京ストーリー~キャンパスライフは3日で終了??? 音声

上田晋也さん(くりぃむしちゅー)が打ち明ける熊本からの上京ストーリー~キャンパスライフは3日で終了???

小泉悠さん後編!無職だった小泉青年がいかにして東大の教員になったのか、その不思議なサクセスストーリーに迫る・・・ 音声

小泉悠さん後編!無職だった小泉青年がいかにして東大の教員になったのか、その不思議なサクセスストーリーに迫る・・・

小泉悠さん登場!いかにして小泉悠はロシア通、そして軍事評論家になったのか 前編・・・ 音声

小泉悠さん登場!いかにして小泉悠はロシア通、そして軍事評論家になったのか 前編・・・

上田晋也、堺正章のすごさに言及「古い記憶を残さず、新しいことにアジャストしていく人」 記事

上田晋也、堺正章のすごさに言及「古い記憶を残さず、新しいことにアジャストしていく人」

上田晋也 転機となった、いとうせいこうとの出会い「そこから僕は、うんちくの勉強を始めました。大学受験よりもはるかに勉強しましたから」 記事

上田晋也 転機となった、いとうせいこうとの出会い「そこから僕は、うんちくの勉強を始めました。大学受験よりもはるかに勉強しましたから」

上田晋也 爆笑問題のすごさに言及「偉いなって思うのは、いまだに漫才を作り続けているところ」 記事

上田晋也 爆笑問題のすごさに言及「偉いなって思うのは、いまだに漫才を作り続けているところ」

くりぃむしちゅー・上田晋也 上京時、マクドナルドに入れなかった?「“39(サンキュー)セットって3,900円じゃないか?”って本気で思っていた」 記事

くりぃむしちゅー・上田晋也 上京時、マクドナルドに入れなかった?「“39(サンキュー)セットって3,900円じゃないか?”って本気で思っていた」

くりぃむしちゅー・上田晋也 最近の悩みは“記憶力”の低下?「有田の名前が出てこなかった…」 記事

くりぃむしちゅー・上田晋也 最近の悩みは“記憶力”の低下?「有田の名前が出てこなかった…」

JR東海CM「クリスマス・エクスプレス」牧瀬里穂の笑顔は撮り直したもの!?CMディレクター・早川和良が怒涛の撮影を振り返る 記事

JR東海CM「クリスマス・エクスプレス」牧瀬里穂の笑顔は撮り直したもの!?CMディレクター・早川和良が怒涛の撮影を振り返る

JR東海CM「クリスマス・エクスプレス」深津絵里編 ムーンウォークをあえて取り入れた狙いとは? 記事

JR東海CM「クリスマス・エクスプレス」深津絵里編 ムーンウォークをあえて取り入れた狙いとは?

山下達郎「クリスマス・イブ」起用の理由は?JR東海「クリスマス・エクスプレス」CMディレクター・早川和良「みんなが聴いた瞬間に『これでいきましょう!』と」 記事

山下達郎「クリスマス・イブ」起用の理由は?JR東海「クリスマス・エクスプレス」CMディレクター・早川和良「みんなが聴いた瞬間に『これでいきましょう!』と」

幻冬舎・石原正康 山田詠美に便箋10枚を送った過去「野生の軍鶏(しゃも)みたいな勢いがあって、自分が担当したいと思わせる作家でした」 記事

幻冬舎・石原正康 山田詠美に便箋10枚を送った過去「野生の軍鶏(しゃも)みたいな勢いがあって、自分が担当したいと思わせる作家でした」